洗脳シーンがある物語っていいよね。

 この一ヶ月間ぼくが何をしていたかを振り返るのはとても簡単だ。眠っていた。そして起きていた。ただひたすらに、盲目的に、敬虔な信者のように。ずっとモバマスをやっていた。アイドルマッチフェスティバルでグループ内優勝を果たすためにケータイとパソコンを駆使していた。M出の家で遊んだ。ゼルダの伝説ムジュラの仮面を3日くらいかけて二人でクリアした。帰省した。再び大阪に戻ってきた。ミス研の先輩の家でTRPGをやった。ともだちとスパワールドへ行った。プールで泳ぎ、温泉を堪能した。学校に行ってないのがママンにばれて親戚のみなさんがいっぱいうちに来た。ゼルダの伝説スカイウォードソードをクリアした。ウイニングイレブンプレーメーカー2010をプレイした。ミス研のみなさんとAnotherを全話一気観した。ちょっと小説を書いていた。それくらいだ。出来事を羅列するとたったこれっぽちのことだ。密度が薄い気がする。時間に対する出来事の比率が低い気がする。だけどよく考えてみりゃあそんなことはない、って気もする。大阪での選択肢が多すぎるだけだ。ぼくが選べた可能性と、選んだ行動を比べたらそりゃあ分母が大きくなるに決まっている。だけど、もう一回よくよく考えてみればぼくは何も選んでいないって気もする。0/無数の選択肢。0/N。だけど、それはたぶんこの一ヶ月にぼくがこの後の人生に関わる大きな選択をしなかったというだけで、だけど、だけど……。
 そんなことよりかさぶたがおいしい。唇にできた吹き出物が治りかけて、かさぶたになったころにかみかみするのがたまらなく楽しい。なのでぼくが毎日ビタミン剤をばりばり噛み砕く。おいしいよビタミン剤、おいしい。