実家にいるわ2

 ゲロ温泉に行った。
 ぼくは「岐阜に行くくらいなら手足切断されたほうがマシだ! 岐阜に行くくらいなら手足切断されたほうがマシだ!」と叫んでいたのだが権力には逆らえなかった。ずるい。思う存分昼夜の区別なしに欲望のままに温泉につかった。とみせかけてホテルで『ヒカルの碁』を全巻読んだ。おもしろかった。ぼくはサイが消えてからもおもしろいと思うんだけど、それは他の人が「サイが消えてからはおもしろくないね」と言っているからかもしれない。あまのじゃくを長らくやってきたので自分の好きがストレートな好きなのか何かのカウンターとしての好きなのかがわからなくなってしまった。たぶん二つに違いはないんだろうと思う。
 ゲロ温泉から帰ってくると本がたくさん増えていた。

 十文字青さんの第九シリーズを全部読んでしまった。ぼくはいままで『ぷりるん』『絶望同盟』『全滅なう』を読んでいた。今回読んだのは『ヴァンパイアノイズム』と『萌神』だ。第九シリーズはすばらしいと思う。どこがすばらしいかというと、登場する女の子たちがぜんぜんかわいくないところだ。女の子はあくまでラノベとしての形を保つために記号的なキャラ付けがされているのだけど、物語が普遍的な思春期の悩みや恋の話を軸に展開するせいか、何か歪みみたいなものが見られていると思う。構造はとてもラノベになりたがっているのだけど、結果として出来上がった物語はラノベであることを拒んでいる。そしてそれがそのままシリーズの魅力になっている。どういうことだろうなあ。歪んでいます、おかしい、何かが、そんな感じだ。どっちかというとファウストとかの空気に近いのかなあ。
 ぼくが好きなのは『絶望同盟』でこれは絶望している全然関係ないみなさんがなんか下駄箱の前(だっけ)に集まって、なんか話をするようになるけど、なんかそのコミュニティは持続しなくて、なんかなくなっちゃうって話だけど、すばらしいと思う。
 今んとこ好きなじゅんばんをつけるなら『絶望同盟』→『ヴァンパイアノイズム』→『ぷりるん』→『全滅なう』→『萌神』かな。
 『ヴァンパイアノイズム』はめっちゃエロいしきゅんきゅんするしな。表紙からきゅんきゅんするしな。女の子はかわいくないけどな。『ぷりるん』はぷりるんが頭おかしいしな。頭おかしい女の子は好きだわ。表紙詐欺感もたまんねーわ。
 『萌神』『全滅なう』は後半でファンタジー的な展開をするけど、なんか『萌神』は圧倒的に長さと個々のエピソードの魅力が足りてない。それがちょっとていねいになった感じが『全滅なう』だったから、今後の第九シリーズが楽しみなんだけど、十文字青さんのツイートに不穏な空気があったので心配です。


 旅行から帰ってきた後はずっと野崎まどのことを考えていた。たぶんこのことはあさってくらいに『2』を読んだあとで改めて書くと思う。『2』を読んで何も思わなかったら書かないかもしれない。ひとつだけ言えるのは、ぼくが今いちばん新刊を楽しみにしている作家が野崎まどだということだ、たぶん。

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

萌神 (一迅社文庫)

萌神 (一迅社文庫)