とらドラ!1の話。

 とらドラについて考える前にまずおさえておきたい前提があって、それはたぶん言葉にした途端に失われてしまう繊細な感情のような気がするし、どんな言葉を使っても表現できない気がするけど、がんばって言ってみると、「大河萌え」ということだ。
 読んでいる最中は、主人公とヒロインの関係が、性格は似たもの同士だけどやってることが違う、主人公は動かないで悶々として、行動するヒロインの影(しるえっと)を努めつつ悶々するってのがアニメハルヒと同じ感じだなあ(小説ではその側面は薄い)とか電柱蹴るシーンはネガティブハッピーチェーンソーエッジに影響うけてね?って思ったりとかしたけど、とにかく大河がかわいかったのでよかった。これ10巻まであるんすね。がんばります。


「ほんと、やになる……世の中は、私たちみたいなガキにはほんとに冷たくできてるんだ! 私たちがこんなにグジグジ、いろんなことで悩んでるってこと、なんで誰もわかってくれないのよ!?」

 人生の道筋に置かれた石のようなものの存在を、竜児は確かに感じている。そして逢坂にも、敵がいる……と、思う。同じように逢坂の人生を阻むモノが、確かに存在していると、そう思う。その敵は誰かを好きになったり、誰かと結ばれたいと願った時に、その質量をずっしりと重くしてみせる。コンプレックス、という名を持つかもしれない。運命とか、生まれつきとか、環境とか、そういうふうにも呼ばれるかもしれない。思春期特有の自意識、とか、自分じゃどうにもできんこと、とか、もっといろんな名前があるかもしれない。でもとにかく、そいつらには殴ったりけったりできる姿がなくて、そして多分、そんな実体のないやつとまだまだこの先ずっとずっと、ずーっと戦い続けなければならないのだ。こんなふうに電柱にでも蹴りを入れてやらなくてもは、一生死ぬまで発散できない。壁でも布団でもよかったけれど、……電柱よ、運が悪かったな。

  (竹宮ゆゆこ/『とらドラ!1』)